なぜ「中小企業法務」なのか?

中小企業の相談相手

言うまでもなく、弁護士は法律専門家なのですが、中小企業においては、法律問題ですら弁護士に相談するという意識が乏しいようです。
もっと端的に表現すれば

弁護士は中小企業の相談相手のリストにすら入っていない。

と言えます。
では、中小企業では、業務問題をどのように処理しているのでしょうか。

中小企業の業務問題の処理手順は、「上に従い、横に倣い、後に復る」と表現されます。
「上」というのは行政や銀行など、企業を指導する立場の組織を指します。
また、「横」というのは同業者のことであり、「後」というのは従来からの慣例のことです。

つまり、中小企業は、問題意識が生じたら、

  1. 行政や銀行などに相談して意見を聞き、その意見に従う
  2. 同業者の姿を見て、同業者のやり方を模倣する
  3. 従来からの慣例を振り返り、それに準じて同様の処理を繰り返す

というのが「普通のやり方」のようです。

1~3の順番はどうであれ、いずれかの処理に従えば、おおかたの問題は解決する(解決したかのように見える)らしく、法律専門家に相談すること自体が稀です。

ただ、中小企業が法律専門家に相談しないかと言えば、そうでもありません。
中小企業の相談リストに載っている法律専門家は、顧問税理士や顧問社労士です。
上記に従えば、第4の相談相手ということになりますが、税理士や社労士は、企業の日常業務に深く関与していますので、最も相談しやすい外部の専門家と言えます。

確かに、税理士や社労士は法律専門家ですので、何らかの法的なアドバイスは得られるはずです。ただ、税理士や社労士は、あくまでも税務や労務に関する法律専門家ですから、税務や労務以外の法分野については専門的理解に乏しい場合が多く、当該個別事案に適した最良の法的アドバイスが得られる保証はありません。

また、紛争処理や紛争予防という観点からの考察には長けていないということも指摘できます。
税理士や社労士の業務自体が、手続の正確さ(決まったルールを忠実に守る)に重きを置くという特質を有しているので、紛争解決(ルールの是非を問う、新たなルールを創設する)という視点での業務遂行には不慣れと言えます。

にも関わらず、法律専門家である税理士や社労士のアドバイスだからということで、それが唯一絶対の法的結論(正解)であると安易に信じ込んでしまう傾向にあり、後々に問題を深刻化してしまう可能性さえあります。

法律問題は全て弁護士にご相談されることを強くお勧めする次第です。