中小企業法務で主として扱う法分野

モノに関する法分野

企業における「モノ」は、利益を生み出す重要な経営資源です。
大量生産・大量消費の時代には、とにかく「モノ」を作り続けていれば、何とビジネスは成り立ちました。ところが、現代社会では、消費者やマスコミの目厳しくなる一方であり、また、法規制も日々複雑化していますので、「モノ」対する意識が低いこと自体が命取りになります。

安全・環境法(管理の問題)

企業が生産する製品や販売する商品についての「安全」と「環境」に関する法制分野です。つまり、生産物の管理の問題です。

例えば、製造物責任法(PL法)、食品安全基本法、食品衛生法、薬事法、地温暖化対策法、廃棄物処理法などの法律が問題となり得ます。
中小企業が「カネ」に意識が集中する余り、「モノ」の質や安全性に気が回らくなると、後々、大問題に発展してしまいます。

企業自身が細心の注意を払っていても、委託先の企業などの意識が低い場合には委託元である企業が法的責任を負う場合もあり得ます。
この分野の違反は、マスコミが飛びつくネタでもありますから、たちどころに業存亡問題に至ってしまいますので、十分な意識が必要です。

独禁法・下請法(取引の問題)

中小企業法務においては、大企業との取引関係を把握して、中小企業を主とし「保護される対象」として捉える法分野です。
中小企業は、競争上不利な立場に置かれることが一般的ですので、大企業から取されることを防止し、特に保護すべき必要性が生じます。
独禁法(独占禁止法)や独禁法の特別法である下請法(下請代金支払遅延等防法)などは、競争が自由・活発かつ公正に行われるよう事業者の活動を規制しそのことを通じて一般消費者の利益を確保することを目的としていますが、副的には中小企業保護を実現する法規範となります。

独禁法における重要な規定としては、「不当な取引制限」「私的独占の禁止」「公正な取引方法の禁止」「企業結合規制」などがありますが、ここでは詳細に触れません。

また、独禁法の特別法である下請法は重要です。
親事業者と下請事業者との間で日々活発に取引がなされる中、様々な法的トラルが生じることがありますが、下請事業者は立場が弱いため、かなり厳しい条を一方的に押しつけられている場合も少なくありません。
そこで、親事業者と下請事業者の公正な取引を目指し、親事業者を規制対象とることで、立場の弱い下請事業者の利益保護を図っているのが下請法です。
下請法の対象となる取引は、主として「モノ」に関する委託契約です。
具体的には、「製造委託」「修理委託」「情報成果物委託」「役務提供委託」なが対象となっています。但し、建設工事に関する請負は建設業法により規制さているため、下請法の適用はありません。

なお、下請法の適用があるのは、親事業者と下請事業者が資本金規模について定の要件を充足する場合のみです。

例えば、製造委託の場合であれば、A・Bいずれかの場合のみです。

  親事業者 下請け事業者
A 資本金3億円超 資本金3億円以下
B 資本金1000万円超3億円 資本金1000万円以下

つまり、中小企業が下請事業者になる場合で、なおかつ、親事業者が比較的大業である場合が想定されているのです。
下請法は、親事業者による優越的地位の濫用等の排除されるべき行為の内容を同法の中で具体的に明文化し、迅速かつ効果的に下請事業者の保護を図ろうとるものです。
例えば、注文の際には「直ちに」注文書を発行することや、代金支払期日は注品を受け取った日から「60日以内」の期日に指定しなければならないこと等定めています。また、60日を経過しても代金を支払わない場合は、遅延利息(14.6%)を加算して支払う義務が生じます。
さらには、親事業者に対して、

  • 下請代金の減額禁止
  • 下請代金の支払遅延止
  • 買いたたき禁止
  • 受領拒否禁止
  • 返品禁止
  • 購入・利用強制禁止?報復措置禁止
  • 有償支給原材料等の対価の早期決済禁止
  • 割引困難な手の交付禁止
  • 不当な経済上の利益の提供要請禁止
  • 不当な給付内容の変更び不当なやり直し禁止

等々の禁止事項を命じています。
実際の取引においては、「力関係」によって法的建前を押し通すことは難しい感じるでしょうが、意外にすんなりと打開策が見つかる場合もありますので、気を持ってご相談されることをお勧めします。

知財法(権利の問題)

知財法(知的財産法)というのは、特許法・実用新案法・意匠法・商標法・著権法などの法分野の総称であり、不正競争防止法なども含まれます。ちなみに不正競争防止法で保護されるのは、「商品表示」や「営業秘密」などです。

一般的には、中小企業が大変な価値を有する特許権や著作権などの知的財産権保有している場合は稀です。
中小企業法務においては、むしろ、他社の知的財産権を侵害してしまう局面にいて発生する法的紛争処理が中心課題かも知れません。