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遺言・相続コラム10 相続・遺産分割における寄与分制度

1 寄与分とは?

 寄与分制度とは、?被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、?被相続人の療養看護?その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした相続人に対して、遺産分割の際に、その貢献に相当する額の財産を取得させることを認めた制度です。  ?の例として、長年被相続人の家業に従事してきた相続人等が、?の例として、高齢の相続人の介護に従事してきた相続人等が挙げられることは容易に想像できるかと思います。  また、?の例としては、被相続人が相続人の生活費の援助をした場合や、借金を肩代わりしてあげた場合が挙げられると思います。

 寄与分を定める手続としては、共同相続人間の協議による場合や、家庭裁判所の調停による場合があり、調停が成立しない場合に、家庭裁判所の審判によることとなります。

2 良くある事例

(1) さて、法律相談等を受けていて良く耳にするのが、「自分(相続人)の妻が、亡くなった母の介護をしてきたのだけど、寄与分として考慮してもらえないの?」といった言い分です。

   答えは、「原則としては」、NOです。相続人の配偶者は相続人ではないので、相続人ではない者の特別の貢献を遺産分割において考慮することは原則としてできません。     もっとも、法律や裁判もそこまで冷淡ではなく、相続人でない者の寄与を考慮しないと公平の理念に反するといえる場合には、例外を認めています。     具体的には、           「(相続人でない者の)寄与が、相続人の寄与と同視できる場合には相続人の寄与分として考慮することも許される」(東京高裁平成元年12月28日決定)       「(抗告人の妻による介護は、)抗告人の履行補助者として相続財産の維持に貢献したものと評価できる」(東京高裁平成22年9月13日決定)         等といった理由によっています。   (2) このような取り扱いは、実務において定着していると言えます。         しかしながら、このような取り扱いは、一見すると、共同相続人間の紛争を、全て公平に解決したように見えますが、後の相続のことを考えると、疑問がまったく残らないわけではありません。         例えば、母親Bの相続時に、妻Cの貢献分を援用し、兄弟Dとの間で自己の寄与分を確保したAが、後に死亡した場合を考えてみます。     このような場合、妻Cとしては、相続人が自分一人の場合でない限り、義母Bに対してした貢献分を、他の相続人に奪われてしまう結果となります。     とりわけ、AC間に子供がおらず、かつ、兄弟Dが生存していた場合は、Dも相続人となりますから、AD間の相続分争いでAが確保した寄与分の一部が、Aの死亡により、再びDに取り戻されてしまうという奇妙な結果となってしまいます。         このように、突き詰めて考えると、公平な紛争解決というのは難しいものだなあと思います。