業務のご案内/ 顧問契約 Advisory Contract
はじめに
中小企業で顧問弁護士が活用されない理由とは?
顧問弁護士制度とは、一般的には、企業が特定の弁護士に対して月々の顧問料を支払う代わりに、ある一定範囲の法的サービス(法律相談や簡単な書類作成など)を無料で受けることが出来る仕組みです。勿論、法的紛争が発生した場合、顧問弁護士は企業の代理人として迅速に対応します。
大企業においては、今や顧問弁護士がいるのは当然のことであり、社内の法務部に法務部員として弁護士を採用している企業も存在します。
一方、中小企業においては、顧問弁護士がいる企業は圧倒的に少数派にとどまっているのが実情です。
では、中小企業で顧問弁護士が活用されないのは何故なのでしょうか。単純に、顧問料負担というコスト面だけがネックになっているのでしょうか。
ある調査※1によると、顧問弁護士がいる中小企業はわずかに12%であり、顧問弁護士のいない中小企業のうち、実に77%の企業が「顧問弁護士が必要とは思わない」と回答しました。
また、別の調査※2によると、弁護士を全く利用したことがないという中小企業は、東京以外の全国では48%にも及び、その理由として、「特に弁護士に相談すべき事項がないから」との回答が75%にも達しています。
つまり、中小企業においては、顧問料云々という問題以前に、日頃の企業経営において「そもそも弁護士に相談するようなことはない」とお考えのようであり、結局、「相談することもないのに、月々の顧問料を払ってまで顧問弁護士を置く必要などない。」という結論に至るのだと思われます。
- ※1
- 2005年、大阪市立大学大学院法学研究科の企業法務研究プロジェクトが実施した「中小企業の法的ニーズ調査」。対象は大阪府内の中小企業で、有効回答数1,837社。
- ※2
- 2006年から2007年にかけて、日本弁護士連合会の弁護士業務総合推進センターとみずほ総合研究所株式会社とが共同で実施した「中小企業の弁護士ニーズ全国調査」。対象は全国の中小企業で、有効回答数3,214社。
紛争処理だけが弁護士の仕事ではありません!
以上のような考え方の背景には、弁護士は「法的紛争を処理する専門家」であり、顧問弁護士制度は「掛け捨ての保険」のようなものだという認識があるように思えます。つまり、いざという時(重大な法的紛争の発生)のため「だけ」に月々の保険料(顧問料)を払い続けるという感覚です。
しかし、現在の複雑な法社会においては、たった1つの重大な法的紛争が企業の存亡にまで影響する危険性が常にありますので、経営資源が脆弱である中小企業こそ、紛争予防・損害回避の視点を持つことが肝要です。
近時、企業経営に関する法務を医学に準えて、臨床法務(紛争解決・損害回復の為の法務)・予防法務(紛争予防・損害回避の為の法務)・戦略法務(経営戦略・利益追求の為の法務)の3つに分類し、臨床法務だけをやっていたのでは企業は生き残れない、予防法務・戦略法務こそが企業の生命線であると盛んに言われています。
当事務所も、予防法務を実践する手段として顧問弁護士制度を位置づけて頂き、大いに活用して頂きたいと強く願っているところです。
顧問弁護士制度は、決して掛け捨ての保険ではありません。何故なら、いくら高額の保険料を掛け続けていても、保険事故の発生そのものは予防できないからです。
顧問弁護士の存在は、法的紛争それ自体を予防できる可能性があるという点で保険制度とは本質的に異なるのです。むしろ、企業の体調管理をチェックして、わずかな体調異変にも的確なアドバイスをしてくれるホームドクターのような存在に近いと言えます。
今後、「予防法務」はますます重要になります!
近時、日本社会は、規制緩和の名の下、従来の「事前規制型社会」から「事後監視型社会」へと移行しつつあります。
事前規制型社会では、監督官庁が行政指導という形で細かい点を逐一指導してくれたわけですから、行動を開始する前に適法性が確認できました。
ところが、事後監視型社会では、行動の適法性は事前には確認できません。つまり、実際にやってみなければ何も分からない、ということです。
別の言い方をすれば、事前規制型社会では官庁が法的アドバイザーの役割を担っていたので、その点に関する顧問弁護士は不要とも言える状況だったのですが、事後監視型社会では、企業が自己責任で行動の適法性を判断する必要が生じるのです。そして、事後監視型社会では、違法行為に対する制裁が非常に厳しくなる、ということも忘れてはなりません。
また、現在の複雑な法社会において、コンプライアンス(法令等遵守)に無関心でいると、顧客や従業員からも訴えられることになりかねません。企業が違法行為をしていたということになれば、裁判では当然負けますし、多額の賠償金も覚悟せねばなりません。企業の支払能力を超えてしまったら倒産に向かってまっしぐらです。
さらに、現代では、企業の違法行為に対する社会(マスコミ)の目も大変厳しくなってきていますので、社会的な信用はいとも簡単に失墜します。
以上のとおり、法務部等に有能な人材を割り当てることの出来ない中小企業こそ、顧問弁護士が必要不可欠であることがお分かり頂けると思います。