業務のご案内/ 中小企業法務 Small and Medium Enterprise Law
カネに関する法分野
企業における「カネ」は、企業運営・存続にとって最も重要な経営資源でしょう。
その意味でも、最もシビアに対応すべき法分野とも言えます。
契約法(収益の問題)
中小企業が最も苦手とする法分野ではないでしょうか。
もちろん、収益に直結する営業活動自体は、各社が自信を持っていらっしゃるところでしょうが、商取引をシビアに「契約」することは苦手かと想像します。
契約交渉や債権回収の問題は、大企業であれば、法務部のメイン業務となるべきものですが、そのような法務専門スタッフを常置できない中小企業においては、どうしても「手薄」とならざるを得ない法分野です。
しかし、契約交渉や債権回収の失敗は、売上ダウンに直結します。「回収なければ売上なし」という言葉があるように、会計上の売掛金だけを積み上げていっても業績は一向に改善できません。売掛金は回収してナンボのものです。
中小企業においては、取引先との関係が緊密であるためか、契約関係が杜撰になりがちであり、契約関係よりも人間関係を重視する傾向があります。そのため、契約書すら作成されないケースも珍しくありません。
商取引において、契約を無視する姿勢は命取りです。
改めて、「債権回収の成否は契約書の良否にかかっており、契約書の良否は契約交渉の巧拙にかかっている」ということを肝に銘じて頂きたいのです。
既に結ばれている契約を変更するのは大変ですが、一度は、弁護士に契約書をチェックしてもらうと良いでしょう。契約内容自体が何らかの法律に違反している場合もあり得ますし、思わぬ「攻め方」や「守り方」が見つかる場合もあります。
そして、これから契約を結ばれるという場合は、是非とも「事前に」ご相談頂ければと存じます。
金融法(資金の問題)
企業にとっては、資金調達や資金運用は、企業としての生命線であり、経営的には最も関心の深い分野でしょう。
金融法分野は日々複雑化を極めていると言っても過言ではなく、金融法務を企業法務から切り離して独立の専門的法分野として把握するのが近時の主流ですが、中小企業法務で扱う金融法は、金融法務の最先端議論までを逐一理解する必要はありません。
資金調達を直接金融(株式や社債発行)で行う場合は会社法や金融商品取引法の領域となりますが、中小企業の場合、活用場面は低いでしょう。
もっとも、中小企業が投資家の立場となる資金運用の場面では、会社法や金融商品取引法を活用する場面が生じるかも知れません。
中小企業の資金調達手段は、圧倒的に間接金融(金融機関からの借り入れ)が中心でしょうから、まずは、金融機関との契約関係を正確に把握する必要があります。
ちなみに、従来は、不動産を担保に入れて融資を受けるというのが一般的でしたが、近時は、動産や売掛金等を担保目的で譲渡する融資形態なども登場し、動産・債権譲渡特例法(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律)などの新しい法分野の理解も不可欠になっています。
また、金融機関からの通常の借り入れ以外ではリース契約が重要です。リース契約の多くは、ファイナンス・リース契約(典型的には、リース料にリース物件の取得価額と諸費用が全額含まれているもの)であり、リース物件を単に借りているというよりも、実態は「融資」そのものです。
中小企業の多くがリース契約を利用していますが、リース契約に対する理解が不十分であることから非常に紛争化しやすいと言えます。個人事業者などの場合は、リースとレンタルを混同している方もいらっしゃいますし、事業用に必要ではないのに「騙されて」リース契約を締結してしまうケースも多く、経済産業省も注意を喚起しています。
金融分野は、企業の生命線とも言える「カネ」の流れに直結する法分野ですから、最低限の法的武装は必要不可欠です。
不法行為法(賠償の問題)
事故は突如として発生します。そして、企業への責任追及も突然です。
契約関係にある当事者同士であれば、あらかじめ主要なトラブルは想定できますので、契約書さえ完璧に仕上げておけば、おおかた安心です。
一方、事故を未然に防止することは困難です。
しかし、困難だからと言って、事故防止に意を注がないという姿勢は、企業としては絶対にあってはなりません。
大企業であれば、危機管理を担当する専門部署が存在するでしょうが、中小企業の場合はそうもいきません。
でも、ご安心ください。中小企業においても、危機管理は十分に可能であり、事故を未然に防止することが可能です。
事故には、技術的要因に基づくものと、法的要因に基づくものとが存在します。このうち、法的要因に基づく事故(違法性の認識が低いがために発生する事故)は、弁護士に日常的に相談することによって防止可能です。
この点、「ハインリッヒの法則」というのが事故防止の観点からは大変参考になります。詳細は、[顧問契約]をご覧ください。
事故が発生した場合、被害者としては、何とか賠償金を確保したいという思いから、直接の加害者である個人よりも、企業の法的責任を追及する傾向にあります。
企業が法的責任を負う場合というのは、企業に「過失」が存する場合です。これを過失責任の原則と言います。
ここで「過失」とは、予見可能性・結果回避可能性を前提とした予見義務違反・結果回避義務違反ですから、常に「危険を予見しようとする姿勢」と「結果を回避しようとする努力」とを心がけていれば、法的責任を回避することは十分可能です。要するに、想定される限りの手段を尽くしたのであれば、過失責任を問われることはありません。法律は、不可能を強いるものではないからです。
不法行為に基づく損害賠償が問題となる場面は多岐にわたりますが、企業が管理する施設内での事故、従業員が起こした事故(交通事故や作業中の事故)、従業員が被害者となる労働災害など、あらゆる局面において、企業の使用者責任、管理責任が問われます。
事故が大きければ大きいほど、マスコミが注目しやすいとも言えますので、「まあ、大丈夫だろう。」という考えは捨て去り、あらゆる可能性を想定して「ひょっとしたら、危ないかも知れない。」という慎重な姿勢を持ち続けて頂きたいものです。
そして、企業経営のあらゆる側面において、違法行為がないか、事故発生時に過失を問われる余地がないか、弁護士にご相談してみてください。
当事務所は、あらゆる事故処理に豊富な実績を有しています。
倒産法(負債の問題)
中小企業の場合、株式発行などによって資金を調達することは稀で、ほとんどの場合、金融機関からの融資に頼っています。
つまり、資金調達の方法は、有利子負債に限定されるのが通常です。
当然、経営不振に陥った場合には、廃業という事態を意識せざるを得ません。まずは、金融機関と粘り強く交渉することでしょうが、金融機関との交渉が決裂すれば、残された途は、法的な「倒産」しかありません。
法的な倒産手続には、企業が再生する途を目指す手続と企業を清算してしまう手続とがあります。
前者には、民事再生法・会社更生法などがあり、後者には破産法・特別清算などがありますが、中小企業法務において重要なのは、民事再生法と破産法の2つです。
企業経営を続けるのか否か自体は高度な経営判断の問題ですが、法的な倒産手続を遂行するに際しては、高度な法的判断が要求されます。ここの法的判断を誤ると、不本意な結果を招致してしまいます。
従って、この段階に至っては、決して経営者お一人で頭を抱えることなく、可能な限り「早期に」弁護士にご相談してください。
北勢綜合法律事務所は、企業の倒産処理には豊富な実績を有しています。