業務のご案内/ 離婚 Divorce
離婚にまつわるお金の問題
結婚してある程度の時間が経ち、一つの家庭としての実態が強くなればなるほど、離婚は、単に婚姻関係を解消するだけのことではなくなってきます。例えば次のような場合、離婚と関係して、お金のことについて様々な問題が生じてきます。
- 夫婦の一方のDVや不貞行為などが離婚の原因となった場合
- 夫婦で土地や家を購入したり、多額の預貯金を持っていたりする場合
- 夫婦の一方が外で仕事をしてお金を稼ぎ、もう一方が内から家庭を支えるというライフスタイルをとっていた場合
- 熟年離婚の場合
- 別居状態になり、生活費を入れてくれなくなったような場合
離婚を決意される方は、多かれ少なかれ、離婚に至るまでの経緯の中で自分の尊厳や誇りが傷ついたことに、心を痛めておられることと思います。「お金で解決できる問題じゃない!」という気持ちになることもおありでしょう。
しかし、長年主婦をやっていたため仕事のあてがなかったり、離婚後の生活立て直しのための資金がなかったりする場合には、お金の問題は、現実的な問題として真剣に考えなければならない事柄です。
以下では、離婚と関係するお金の問題として、[慰謝料]、[財産分与]、[離婚時年金分割]、[婚姻費用分担請求]についてご説明します。
なお、お子さんのおられる夫婦の離婚では、養育費も切実なお金の問題ですが、これは子どもに関する問題として別項目でご説明します。
離婚の際の慰謝料
夫婦の一方による不貞行為や暴力、精神的虐待などが原因で離婚に至った場合、または離婚によって配偶者の地位を失うこと自体が法的に賠償するべき精神的苦痛を伴うと認められる場合、他方の配偶者は、自分の受けた精神的な苦痛に対する損害賠償(慰謝料)を請求できます。
また、配偶者の親族によるいじめ等が離婚の原因と認められる場合には、これら親族にも慰謝料を請求できます。
さらに、不貞行為が離婚の原因の場合には、不貞行為の相手方に対しても慰謝料を請求できる場合があります。
慰謝料請求は、不法な行為によって精神的苦痛を被った被害者に法的に認められた権利です。また、離婚後の生活のための十分な資金がない方にとっては、貴重な生活資金にもなります。
「お金の問題じゃない」というご自身の気持ちとの折合いもあるでしょうが、そういう権利があるということだけは覚えておいていただければと思います。
なお、離婚慰謝料については、離婚時から3年で時効にかかる(請求できなくなる)とされていますので、注意が必要です。
離婚の際の財産分与
離婚の際には、婚姻中に夫婦が協力して取得した財産を、それぞれに分配して清算するよう請求することができます。これを財産分与と言います。
分与の対象となる財産は、婚姻中、夫婦の協力によって得た財産です。夫の給料で購入した夫名義の家でも、妻が主婦として家庭を守り、夫の就労を支えていたと認められるような場合には、分与の対象となります。どちらかが不動産の名義を取得し、他方が金銭を受け取るという形の分与の仕方もありえます。
他方、夫婦の一方が結婚前から持っていた財産や、結婚中に自分の被相続人が亡くなったことによって得た相続財産などは、「婚姻中、夫婦の協力によって得た」とは言えないので、分与の対象にはならないと考えられます。
財産分与については、離婚時から2年間を過ぎると請求できなくなるとされており、慰謝料請求よりさらに期間が短くなっていますので、特に注意が必要です。
離婚時年金分割
例えば、夫が長年会社勤めをし、妻が専業主婦をしていた夫婦の場合、夫と妻の年金受給額に大きな差が生じることがあります。そこで、この夫婦が熟年離婚した場合、妻は十分な年金給付を受けられず、生活に困窮するというケースがしばしば見られました。
しかし、妻は長年主婦として家庭を守り、夫の会社勤めに内から貢献していたのに、その貢献が年金受給額に反映されないのは公平ではありません。そこで、最近の法改正により、離婚時以後の夫婦の年金を分割する制度が始まりました。
離婚時年金分割は、単純に「離婚すれば夫の年金の半分をもらえる制度」だと思われている節がありますが、
- 対象となる年金は婚姻期間中に加入していた厚生年金及び共済年金のうち報酬比例部分だけで、夫が受け取る全ての年金が分割対象となるわけではない。
- 分割された年金が支給されるのは自分が年金を受け取れるようになって以降のことで、年金支給年齢未満で離婚しても、すぐには受け取れない。
など、意外と複雑な制度となっています。
婚姻費用分担請求
生活費や医療費、子どもの養育費、学費など、婚姻生活を維持し支えていくための費用を婚姻費用と言います。婚姻費用は、夫婦の資産、収入などの事情を考慮して、夫婦間で分担するものとされています(民法760条)。
しかし、夫婦間に溝が生まれ、別居状態になると、主な稼ぎ手の夫が妻に対して生活費を入れず、妻は日常の生活に支障をきたしてしまうということがしばしば起こります。
このような場合、生活費を入れてもらえなくなった妻は、夫に対して、婚姻費用を分担せよという内容の調停を家庭裁判所に申立てる>ことができます。
婚姻費用分担請求は、離婚給付と言われる離婚慰謝料や財産分与とは異なり、あくまで婚姻中の費用についての請求ですが、現に別居中など、離婚が現実の問題となりつつある夫婦間で問題となることが多いので、離婚についてお悩みの方は、念頭に置いておかれるとよいでしょう。
なお、婚姻費用の算定方法は、後で述べる養育費の算定方法(算定表を用いる方法)と基本的に同じです。