弁護士雑感

ホーム > 弁護士雑感 > 遺言・相続コラム1 遺言クイズ 有効?無効?

遺言・相続コラム1 遺言クイズ 有効?無効?

 トップページ「新着情報」欄でも告知させていただいたとおり、今月から、当事務所の若手弁護士が交代で、交通事故と遺言・相続についてのコラムをリレー連載することになりました。

 そこで、「遺言クイズ 有効?無効?」という記事を用意していたのですが、タイミング悪く、先週の「行列のできる法律相談所」で、ほとんど同じ企画を先に使われてしまいました。

 司会者交代後の第1回目でしたので、見ていた方も多いでしょうね・・・
 ちなみにその回の視聴率は、19.4%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)とのことです。

 ただ、せっかく用意した記事ですので、今回はそのまま使用させていただくことにします。

 ケースとしては、「遺品を整理していたところ、タンスの中から遺言書が見つかった」というよくある(?)場面を想定してください。
 なお、法律で決められた一定の方式で作られる「秘密証書遺言」(民法970条)ではないものとします。

Q1 作成日付が書いていない遺言書は有効?

 →無効です(民法968条)。
  遺言は、遺言をする人(遺言者)が生きている間は、何回でも作り直すことができます。
  そして、作り直した結果、前の遺言と後の遺言とで内容が食い違う場合には、後の遺言の方が有効となります。
  しかし、日付の記載がないと、前後関係が分からず、どちらの遺言が有効か分かりません。
  そこで、日付の特定ができない遺言書は無効とされています。

Q2 では、「平成23年元旦」「平成23年9月吉日」は日付の記載として有効?

 →「元旦」であれば、日付が特定(1月1日)できるので、有効とされています。
  しかし、「○月吉日」については、昭和54年5月31日に出た最高裁判決が、日付の記載とは認められないとして、無効と判断しています。

Q3 夫の遺言書を字の上手な妻に書いてもらっていた場合、その遺言書は有効?

 →無効です(民法968条)。
  遺言書は、遺言者が全て自分で書く必要があるので、代筆による遺言は無効です。
  また、手書きする必要がありますので、ワープロやパソコンで印刷して作成された遺言も無効とされています。
  なお、体の具合などから手書きの遺言を作るのが難しい場合には、公証人役場で、口述(口頭で伝える)によって公正証書遺言を作成することが考えられます。

Q4 印鑑を押し忘れた遺言書は有効?

 →無効です(民法968条)。

Q5 印鑑は三文判・認め印であってもよい?

 →三文判・認め印でも、民法968条の「押印」として認められています。
  ただし、どこにでも売っているようなハンコが使用された場合、遺言者以外の人が押印したものだと主張され、有効性が争われるようなケースも想定されますので、実印を用いるのが無難でしょう。

 

 以上はいずれも、自分で作る遺言=「自筆証書遺言」の場合に問題になることです。
 自筆証書遺言は、簡易に作成することができる反面、法律上の要件を欠いて無効になってしまったり、記載されている内容の解釈をめぐって争いになったりするケースが比較的多いと思われます。

 後日の紛争回避という面では、これから遺言を作成される方は、「公正証書遺言」を作成することを検討されてよいと思います。
 一定の手間と費用はかかってしまいますが・・・

 遺言は、遺言をする方の「最後の意思表示」と言われています。
 上のクイズのようなささいなことで、「最後の意思表示」が無効とされてしまわないようにしたいものですね。