弁護士雑感

ホーム > 弁護士雑感 > 交通事故コラム4 交通事故による逸失利益

交通事故コラム4 交通事故による逸失利益

交通事故に基づく逸失利益とは、「事故がなければ得られるはずだったのに、事故によって失ってしまった利益」のことを指します。
交通事故によって亡くなられた方や、後遺障害を負って、これまで同様に働けなくなった方など、交通事故による将来の収入減少が認められる場合に問題となります。

また、算定の基礎となる賃金については、原則として、事故前に収入実績がある場合には、それによって算定し、学生など、収入実績がない方の場合は、賃金センサス(厚生労働省が毎年行っている賃金調査の統計)の平均賃金によって定められるのが一般的です。

もっとも、交通事故前に収入を得ていた被害者が比較的若年(30歳未満程度)の場合で、「生涯を通じて全年齢平均賃金または学歴別平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合」には、事故前の実績ではなく、全年齢平均賃金または学歴別平均賃金によって逸失利益を算定することが認められています。

このような考えの根底にあるのは
「終身雇用、年功序列の賃金体系だから、普通に働いていればそのうち昇給するだろう」
「今定職に就いていなくても、まだ若いから、将来がある」
という考えであることは否定できないと思います。
実際に、過去の裁判例等からしても、30歳未満の若年労働者であれば、ほとんど全て平均賃金による算定が認められていたようです。
しかしながら、近年の不況及び就労体系の多様化等に伴い、このような楽観的な見通しが立たなくなっているというのは、誰もが感じるところだと思います。
この点、裁判例を見渡しても、「平均賃金程度の収入を得られる蓋然性」につき、よりシビアに審理がされた結果、若年者にとって厳しい認定も増えてきているのではないかと言われています。

弁護士としては、このような傾向を踏まえ、よりキメの細かい主張立証するよう、肝に命じなければならないと感じていますが、一方で、私も若年労働者と同年代の弁護士ですので、「世知辛い世の中だなあ・・・」などと思ったりもします。