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交通事故コラム6 中間利息控除

2012年を迎えました。
本年も、当「弁護士雑記帳」をよろしくお願い申し上げます。

さて、交通事故によって後遺障害が残ったことにより、将来にわたって労働能力が減少し、将来得られたはずの収入が減少すると認められる場合(そのほとんどは、自賠責保険により後遺障害等級が認定された場合です。)、後遺障害がなかったとすれば得られたはずの利益、すなわち「逸失利益」の損害賠償が認められます。

もっとも、この「逸失利益」は、将来、長年にわたって取得するはずだったお金を、まとめて一時金として受け取るものです。
お金は、運用することによって利益を出すことができますので、「一時金として受け取ったお金を『本来受け取るはずだった時点』まで運用すれば得られるであろう部分」については、賠償額から控除するという考え方がとられています。

これを、「中間利息の控除」と言います。

そして、その控除割合としては、民法上の法定利率である「年5パーセント」とすることが、最高裁判所の判例(平成17年6月14日判決)で確立しています。

しかし、この「年5パーセント」については、批判もあります。
端的に言えば、この超低金利時代に、年5パーセントでの運用などできるはずがない、というものです。
先述した判例も、「我が国では実際の金利が近時低い状況にあることや原審のいう実質金利の動向からすれば、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は民事法定利率である年5%より引き下げるべきであるとの主張も理解できないではない。」と述べています。

ところで、現在、法務省で、民法の一部の抜本的改正である「債権法改正」の検討が進んでおり、この議論の中で、民法上の法定利率について、現在の固定方式(年5パーセント)ではなく、変動方式を採用することが提案されています。
ただし、中間利息控除に変動方式の利率をそのまま適用すると、現在の算定方式と比べあまりに差異が生じるおそれがありますから、中間利息控除については、「過去30年ないし40年の平均値」を用いることが提案されています。

しかし、いずれにせよ、上記の内容の改正が実現した場合、現在の算定方法と比べ、賠償額が大幅に変わる可能性もあります。

このように、債権法改正は、交通事故賠償実務にも影響を及ぼします。
法改正の動きについても、しっかりと注視していきたいと思います。