弁護士雑感
遺言・相続コラム2 生命保険金と相続財産
誰の身にも突然起こりうる相続問題ですが、亡くなられた方(被相続人)の財産が多くあるとは限らず、借金が遺産を上回る(債務超過)ということも十分考えられます。
他方で、預貯金等の形での相続財産はないけれども、様々な形で財産を残してくれているケースもあり得ます。代表的な例として、被相続人が生命保険金を掛けてくれていた場合が挙げられます。
このような場合、債務超過のため相続放棄をしつつ、生命保険金だけを取得するということは認められるのでしょうか。
この点に関しては、生命保険契約の内容により異なります。
1 死亡した被相続人Aが、受取人を「長男B」と指定していた場合
→この場合のBさんは、生命保険契約の効果として、保険金を受け取ることができますから、相続財産とは無関係です。ですから、相続放棄をしつつ、生命保険金を取得することも許されます。
2 被相続人Aが、受取人を「相続人」と指定していた場合
→この場合も、特段の事情がない限り、1と同様に考えます。
つまり、「相続人」の資格を有する人たちが、生命保険契約の効果として(相続とは無関係に)、保険金をもらえることになります。
3 受取人の指定がない場合
→受取人の指定がなくても、保険約款の条項に、「保険金受取人の指定がないときは、相続人に保険金を支払う」という条項がある場合があります。
このような場合も、2と同じように考えることとされています。
4 被相続人Aが、受取人を自分と指定していた場合
→この場合、保険金請求権は相続財産であり、相続人はこれを相続によって取得するという考えが一般的です。したがって、相続放棄をした場合、生命保険金を取得することはできないことになります。
このように、亡くなられた方が債務超過の場合でも、契約や約款の内容によっては、生命保険金を取得できる場合がありますから、よく確認の上、適切に判断できるようにしたいものですね。