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遺言・相続コラム6 遺産分割協議と判断能力

被相続人が残した財産がある場合は、それらの財産は相続人全員の共有に属するものとされており、各相続人に分割するには遺産分割協議を経る必要があるとされています。
 
  ここで、遺産を分けるための遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が必要ですが、そのためには、相続人全員が十分な判断能力を有している必要があります。
 
  例えば、相続人の中に認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な人がいる場合には、これらの人たちを保護・支援して適切に遺産分割協議を進める必要があり、不十分な判断能力のまま遺産分割協議に参加すると、後になって無効と判断される可能性があります。
 
  このような場合に遺産分割協議を適切に進めるには、民法の定める「法定後見制度」を利用すると安心です。
 
 
  法定後見制度とは、判断能力を欠く(または不十分な)当事者(これを「制限行為能力者」といいます)がいた場合、親族等が家庭裁判所に対し、後見人選任の申立をし、その後見人の関与(代理または同意)のもと、様々な法律行為を有効に行えるようにするための制度であり、制限行為能力者の保護・支援制度とされています。
  なお、後見人の種類は、判断能力のレベルに応じて、「成年後見人」(判断能力を完全に欠いている人のための後見人)、「補佐人」(判断能力が著しく不十分な人のための後見人)、「補助人」(判断能力が不十分な人のための後見人)に分かれます。
 
 
  したがって、相続人の中に、認知症にり患している高齢者など、協議の内容を理解できないと思われる人がいた場合、当事者間で遺産分割協議をする前に、家庭裁判所に対し後見人選任の申立をした上、後見人の関与のもとで遺産分割を行うほうが良い場合もあります。
 
  もっとも、どのような場合がこれに該当するのかは、事案に応じて考えるべきことであると思いますし、具体的に取るべき手続についても、ケースバイケースですので、迷ったら弁護士に相談されることをお勧めします。