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交通事故コラム3 ドライブレコーダー

交通事故においては、事故態様に関する双方の言い分が全く食い違うことも少なくありません。

典型的には、交差点の出合い頭事故で、双方が自車側の青信号を主張する場合です。
確実な目撃者がいればまだしも、目撃者もいない場合、当時の状況や信号サイクルなどから推論して、どちらの言い分が信用できるかを判断しなければならず、解決までに、長い時間と多大な労力を要します。

そのような案件では、

「ドライブレコーダーが付いていればなあ・・・」

と思うことがしばしばあります。

ドライブレコーダーとは、車載用の小型ビデオカメラです。
運転中の映像を常時記録するタイプや、事故の衝撃に感応して衝撃の前後15秒程度を記録するタイプなどがあります。
最近では1~2万円程度の安価なモデルも発売されています(自動車メーカー純正品はまだ5万円前後するようですが)。
youtubeで「ドライブレコーダー」と検索すれば、事故の瞬間や、思わずヒヤッとする事故スレスレの場面など、様々な映像が投稿されています。

当事務所では交通事故の案件を常時多数取り扱っていますが、ドライブレコーダーの映像を見ることはほとんどありません。
タクシーなどの営業車では普及が進んでいると聞きますが、自家用車では、未だ普及率は高くないというのが実感です(インターネットで検索したところ、2008年時点での自家用車普及率0.1%との情報に接しました)。
今後の普及に期待したいところです。
自動車保険料の優遇措置や、(ETCで実施された)機器購入補助金なども一考に値するでしょう。

ただ、ドライブレコーダーを裁判の証拠とするにあたっては、問題点もあります。

ある法律専門雑誌では、ドライブレコーダーの映像は「非常に有益な証拠」と評価される一方で、映像を改ざんされたり、映っていなかったと言って提出を拒まれるおそれが指摘されました(判例タイムズ1346号「座談会・交通損害賠償における実務の現状」12~13頁)。

もっとも、この点は、普及率が100%に近づけば、一方がデータを改ざん・隠蔽したとしても、他方がデータを提出して対抗可能ですので、普及とともに次第に問題とはならなくなっていくのではないでしょうか。

いずれにせよ、早期に普及することが望まれます。

最後に、私は、ドライブレコーダーの一番の効用は、裁判の証拠に使えることではなく、ドライバー各自がカメラを意識して、より慎重に運転するようになることだと考えています。

不幸な交通事故が起こらないに越したことはありませんので。